銀棺の一角獣
「儀式の中で神殿の中のとある場所に立つ必要があるのだそうです。それを終えない者には伝承を継がせることはできない――と」


 穏やかな物腰のカレンだったけれど、断固として神官長をディレイニー王国に向かわせることだけは反対した。


「――父上に相談してみようか」


 キーランの口から出たライオールの名に、アルティナの肩がぴくりとする。あれからライオールに会う機会はなかったけれど、彼に対する恐怖心は消えようとしない。


「相談って――」


 アルティナの声が震えた。


「君を城から出すには、父上の許可がなければ。許す――許さないはわからないけど」

「……でも」

「僕から話をしてみるよ。父上を説得できるかどうかは僕次第になってしまうけど」


 アルティナは首を振った。


「それはいけません」


 これ以上キーランの好意に甘えるわけにはいかない。アルティナを居心地のいい部屋に移動させてくれて、騎士たちに手当もしてくれた。
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