銀棺の一角獣
 信じかねるというように、ライオールの緑色の瞳を獰猛な光が横切る。けれど、それは一瞬のことだった。


「キーランにふさわしくありたい、か」


 何がおかしいのだろう。笑い混じりの声にアルティナは眉を寄せる。


「キーラン様のくださったお優しさにお返しがしたいだけです……」

「わかった」


 ライオールは初めて椅子から立ち上がった。それから執務机を回ってくると、アルティナの手をとって部屋の外へと導いた。


「一週間後にはたてるようにしておこう。キーランとともに行ってくるがよい……ライディーア女王陛下」


 最後に敬称で呼ばれたことに――見くびられていると感じないわけにはいかなかったけれど、アルティナはそれ以上は何も言わず、執務室を後にした。

 全てを話すつもりがないと見抜かれていなければいいけれど、と思いながら。
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