KISS
「ウルサイ」
目を逸らして堪えた。
だめだ、泣きそう。
どうしてあたしはこんな奴が好きなのかな?
叶わないって分かってるのに。
「えみ」
返事をしてしまえば、もう戻れない。
「こっち、向いて?」
向いてしまった方がきっと楽だろうけど。
巧、あたしもうひとりで大丈夫だから。
「た、「あれ〜巧!?」
あたしの声に被さってきたのは、女の子の声。
声がした方を向くと、大人っぽい人がいて・・・あれ、見たことあるような?
「・・・木之下」
・・・木之下って、あの?
「やだ、怜って呼べばいいじゃん」
くすくす笑う姿は酷く妖艶で。
・・・巧と釣り合うほどに美人だった。