KISS
顎に触れた手が強張る。


巧の目を見てしまったら、多分何も言えないから俯くしかなかった。


「質問に答えろって」


強張った手とは違って強気な言葉。


「俺、お前に質問していつも答が返ってこないんだけど」


その一言に、思わずはっとした。


そうだ、あたしはいつだってはぐらかしていた。


・・・本当のことを言ってしまったら、止まらなくなりそうで、怖くて。


「・・・巧だって約束守ってくれないじゃない」


あたしを優先するってのも嘘?


全部くれるってのも嘘?


嘘に塗り固められた、あたしたちの『幼なじみ』という関係。


「あたし、巧の傍にいると辛い」
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