レベッカ
「やっぱさ、あたしがもっと早く」
「それは言わない方がいいよ」
だがその思いは、ロイの早口によって遮られた。
アレンの隣に並んで、フェンスに寄り掛かる。
その横顔を見上げて、アレンは「悪い」といた。
そんなことを言っていたって、パウルが帰って来るわけでも、ロイの怪我が治るわけでもないのだ。
「でも……せめてあたしもマルクの姿を見てれば。いたんだろ、あの時、あの工場に」
「うん」
「ロイ一人じゃ信じて貰えなくても、二人なら」
「どうかな……」
目を伏せて言うロイに、アレンは「え」と声を出す。
そんな彼女にちらりと視線を向けてから、ロイは改めて口を開いた。
「あの場にマルクがいたって証言できるのは、俺一人だよ。もしアレンが見てたとしても、たった二人」
「発言することに意味はあるだろ。誰かが疑ってくれれば」
「発言、できると思う?」
「……え?」
難しい顔のまま、首を傾げる。
ロイを睨みつけるような目付きで、眉を寄せた。
「消されるよ。俺ら二人とも、何か言う前に」