アカイトリ
凪が差し出したものとは、漆黒の腕輪だった。


「…何だ、これは」


「嵌めてみりゃわかるさ」


警戒してそれを手にも取らない天花の腕を無理矢理に握り、それ、と軽い掛け声と共に左腕に嵌める。




……何も、起きない。


「…?」


「よし、いい案配だな」


凪が空を見上げると、太陽が顔を出した。

鳥に戻らなければいけない時間が来た――

その場から去ろうとするが、凪は手を離さない。


「おい、気付かねえのか?もう完全に陽は上っているぞ」


「…!!」


そういえば――朱い姿に戻っていない…!


「その腕輪を嵌めている限り、鳥に戻ることはねえよ。俺が作ったんだ。どうだ、すげえだろ?」


「何故、そのような力を半分人であるお前が持っているんだ!?」


「ああ、親父はもっとすごかった。神の悪の部分…つまり、巨大な力は全て親父に注ぎ込まれた」


放心している天花の身体を好き放題にべたべた触ると、耳元で囁く。


「俺もお前を抱くことはできねえが…長い時を共に生きることはできるぜ」


「…何故これをわたしに…」


完全に朝になり、使用人たちが起き出したため、凪が天花から離れ、堂々と出入り門へと向かう。


「面白いからに決まってんだろ。お前らがどうあがいたって結ばれることはないんだからよ」


――去って行った…


とても嬉しいはずなのに、とても惨めな気分になった。


体内の激痛はなおも続く。

一先ず颯太はこのまま寝かしておかなければならない。


ふらつく足で自室に向かう途中。


「天花様…っ」


声をかけられ、そちらを見ると、芹生がひざまずいていた。


「天花様、俺…俺…!」


頭を上げることができない芹生の頭を撫でた。


「気にするな。助かった。わたしも無事だ。お前も無事でよかった」


逆に気遣われ、芹生は歯を食いしばる。


「次は絶対にこの命を賭けて…」


「ああ。あまり気にするな」


そう言い、自室に戻ると、天花は嵌められた腕輪を外し、朱い鳥に戻ると片隅に身を丸め、ひたすらその痛みに耐えた――
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