アカイトリ
凪が差し出したものとは、漆黒の腕輪だった。


「…何だ、これは」


「嵌めてみりゃわかるさ」


警戒してそれを手にも取らない天花の腕を無理矢理に握り、それ、と軽い掛け声と共に左腕に嵌める。


…

……何も、起きない。


「…?」


「よし、いい案配だな」


凪が空を見上げると、太陽が顔を出した。

鳥に戻らなければいけない時間が来た――

その場から去ろうとするが、凪は手を離さない。


「おい、気付かねえのか?もう完全に陽は上っているぞ」


「…!!」


そういえば――朱い姿に戻っていない…!


「その腕輪を嵌めている限り、鳥に戻ることはねえよ。俺が作ったんだ。どうだ、すげえだろ?」


「何故、そのような力を半分人であるお前が持っているんだ!?」


「ああ、親父はもっとすごかった。神の悪の部分…つまり、巨大な力は全て親父に注ぎ込まれた」


放心している天花の身体を好き放題にべたべた触ると、耳元で囁く。


「俺もお前を抱くことはできねえが…長い時を共に生きることはできるぜ」


「…何故これをわたしに…」


完全に朝になり、使用人たちが起き出したため、凪が天花から離れ、堂々と出入り門へと向かう。


「面白いからに決まってんだろ。お前らがどうあがいたって結ばれることはないんだからよ」


――去って行った…


とても嬉しいはずなのに、とても惨めな気分になった。


体内の激痛はなおも続く。

一先ず颯太はこのまま寝かしておかなければならない。


ふらつく足で自室に向かう途中。


「天花様…っ」


声をかけられ、そちらを見ると、芹生がひざまずいていた。


「天花様、俺…俺…!」


頭を上げることができない芹生の頭を撫でた。


「気にするな。助かった。わたしも無事だ。お前も無事でよかった」


逆に気遣われ、芹生は歯を食いしばる。


「次は絶対にこの命を賭けて…」


「ああ。あまり気にするな」


そう言い、自室に戻ると、天花は嵌められた腕輪を外し、朱い鳥に戻ると片隅に身を丸め、ひたすらその痛みに耐えた――
< 101 / 160 >

この作品をシェア

pagetop