アカイトリ
蝉が外で盛大に鳴いている。

颯太は大きくしゃくりあげながら泣く天花をただ抱きしめた。


本当は、これだけで十分幸せなのに――


この朱い鳥を前にすると、何もかもが欲しくなる。


――命が短いだけに焦りは隠せず、天花をただ翻弄する毎日だった。


「すまん、天花…お前を傷つけた…」


やわらかい身体。

抱いたところで、後悔は増すばかりかもしれない。


近い将来、逝かなければいけないのだから。


「今日俺は謝ってばかりだな。菖蒲にも悪いことをした。お前を重ねてしまった」


天花の表情は見えない。

ただ深く傷つけたことは確かで、深く自身も傷ついたのは、確かで――…


「同じ色の鳥に造られていれば、俺たちはつがいになれたかな」


想像でしかないが、緩やかな時を永遠に生きてゆける、幸福な妄想。


「天花・・・俺は近いうちに去るが…来世があるならば、共に夫婦になろう」


――ぱっと天花が顔を上げる。


切望に溢れる瞳。


「わたしは、数千年を生きてきた…。死にたいと、何度も思った」


――独りぼっちでずっと生きていくなんて、なんという罰。


「命を捨てないでくれ…。わたしはようやく、同朋と出会えたというのに。愛されたいと思ったのに」


顔を近付けて、颯太の唇に唇を重ねた。


「天花…俺たちの心は…魂は、繋がっていると思っていいだろうか…?」


――舌を絡めあいながら、額を重ねて瞳を閉じた。


「ああ。わたしは、お前のものだ。身体は拒絶を繰り返すけれど、乗り越える術を見つけて、必ずわたしを抱いてくれ…」


誰に、何に許しを請えば願いが叶うのだろうか?


何に、誰にすがりつけば、願いが叶うのだろうか?


困難はさらに険しくそそり立ち、だが颯太は残り短い命を賭してあることを決めた。


「天花、お前の呪いを解く方法を探そう」


神との対峙。


探そう。


どこにいるかもわからない我々の創造主を。
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