アカイトリ

神とは全てを統べる者なりて

動悸を抱えつつ二人は目覚めた。


「天花…どうして泣いている?」


言葉もなく泣き続ける自分自身に天花も動揺を隠せない。



「わから、ない…だが…とても、懐かしい気持ちになる」


――颯太は横で眠る天花の朱い髪を撫でながら、それに賛同した。


胸の刻印が…


身体に流れる血が、何かを叫んでいる。


「俺も胸騒ぎがする。…ここが、疼くんだ」


心臓の刻印に触れながらそう言うと、天花はすり、と頬を寄せた。


「何故だろう?神を探すと決めた直後にこんな…」


嫌な胸騒ぎだ。

決して、良い予感ではない。


――あれから共に魂がひとつであると確認して、二人は蔵で一族が遺した書物を紐解いた。


天花はまだ文字を完全に覚えていないため、必然と颯太のなすことを見たり、絵巻物を眺めたりしていた。


まだ決定的なものは見つかっていない。


そのまま夜を迎え、先程眠ったばかりだったのに。


「…この刻印は、とても綺麗だ」


藍色の三つ鉤の刻印。


「そうか?はじめて言われたぞ」


「…それは、恥ずかしくて口に出せないだけだろう。お前は美しい


――そう言い、刻印に口づけた。


「て、天花…?」


はじめての積極的な行動に、颯太は驚きつつも半ば押し倒されるような形になり、口ごもった。


「わたしはお前と生きてゆくと決めた。愛したいし、愛されたい。だから…愛されるばかりでは、つまらない」


――本当は心臓が口から飛び出そうなほどに緊張している。


けれど、颯太の感じている顔を見たら、止まらなくなっていた。


「どう…思う?」


尋ねると、せつないため息を吐きながら颯太が頷いた。


「天花、お前が俺を襲おうとは」


「…わたしにもっとすごいことをするつもりなんだろう?ならば、今のわたしの、精一杯のやり方で、お前を愛してやる…」


立場の逆転。


恐ろしい程に、心臓の高鳴りが重なる――…
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