アカイトリ
あの女…菖蒲が颯太にしていたことをやってみよう。


――挑戦まじりな気持ちになるが…やはり恥ずかしく、たどたどしく颯太の唇に指で触れた。


「天花…正気か…?」


覆いかぶさるような形になっている天花の熱さに潤んだ朱い瞳は、この先の行方を如実に語っていた。


「あの女にこうされていた時のお前は、見たこともない顔をしていた…。ならば、わたしがそんな顔をさせてみたい」


――唇が颯太の頬を撫でる。

颯太の瞳は驚きに溢れ、ただただ天花を見つめていた。


…喜びの時――


「天花…こんな…こんなことが…」


組み敷くのではなく、組み敷かれる。


この世で一番大切な朱い鳥に――


「…熱い」


天花が呟く。

視界に見えるのは、浴衣から覗く白い肌。


天花は颯太の頬にほお擦りをした。


滑らかなその感触に颯太が慌ててそれを押し止めた。


「駄目だ、天花…お前、何をして…」


最も美しいと思える女にあちこちを触られて、颯太は耐えるように瞳を閉じた。


「お前は死なない」


確信に満ちた口調で颯太の頬に口づけると――深く深く…唇を重ねた。


耐える颯太。

くしゃりと天花の朱い髪を握りしめる。


「わたしを変えた男よ。お前を…失いたくない」


「天花…愛している」


――何度そう言われても飽き足らない。

何度抱かれたとしても、きっと飽き足らない。


時々声の漏れる天花。

菖蒲を抱いていた時よりもずっとずっと、颯太は愛しさを感じて背中に腕を回した。


――早く抱きたい…


早く俺のものにして…死んだっていい、一夜でも俺のものにできたら…と願い、天花を見つめた。


「お前は本当に、俺を驚かせてくれる…」


両腕を引っ張られて颯太の身体に倒れると、うっとりする微笑を浮かべた。


「お前が喜ぶなら、いつでもしてやる。わたしは喜びをもたらす神の鳥なのだから」
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