アカイトリ
穏やかな陽射し――


朝の光が目に入り、颯太は目を細めるとむくりと起き上がった。

天花が居ない。

障子を開けて外に出ると、縁側に座り、地につかない細い足をぶらぶらと揺らしながら小さき鳥たちと戯れていた。

頭に留まっては髪を突く鳥。

肩に留まっては首にすりつく鳥。


「話せるのか?」


声をかけると、天花がふわっと微笑んだ。

…最初に出会った時は剣を首にあてて瞳を吊り上げ、威嚇していた天花。


今は心底愛しさに溢れた表情で共に朝を迎えてくれる。


身体はまだひとつになっていないけれど。


「これらは話せない。歌いかけるだけだ」


「お前が俺に歌いかけてくれるのはいつなんだろうな?」


隣に座り、肩を抱くと、身体ごと寄り掛かってくる。

まだぶらつかせている異常に白く細い脚。

着崩れた浴衣からのぞく、手に収まりきらない豊満な胸の谷間。


心はもちろん、身体もひとつになるためには神と早く対峙しなければ、今いっそう短く感じられる命の使い方を誤ってしまう。


「神の剣を作る人間を殺さないでいてくれるか?」


そう問うと、天花は一瞬不満げに眉を潜めたが頷いた。


「わかった。だがお前の命の危機を感じたならば容赦はしない」


断固たる口調で決意を語る。


「できるならば手にかけたくはない。けれどわたしはまだ人を信用していないんだ。お前以外はまだ絶対悪と言ってもいい位に」


――颯太は声を潜めて笑った。

喉仏が動く様を天花が見つめて、喉仏に触れて唇でなぞった。


「おい、何をする」


「お前のそのあたりは特別綺麗だ。ずっと触れてみたかった」


「最近大胆だな」


「お前と張り合うにはこれ位でないと負けてしまう」


「勝ち負けの問題か?」


――心底からおかしくなり、颯太は笑い声を上げた。


「ここは落ち着かないな。あちこちから誰かに見られている気がする。天花、帰ろう。俺たちの家に」


手を取って立たせると、見計らったかのように楓が馬を引いてきた。


金の髪が何よりも眩しいはずの光を反射させる。


隣に居たい。

ずっとずっと。

天花は祈った。

祈る存在はなくとも、ただ祈った。
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