アカイトリ
蔵でまた書物を読み漁っているといつの間にか天花が居て、冷たい床に座り込んでいた。


「どうしたんだ?」


「菖蒲が発った」


颯太は軽く肩を竦めた。

そうだ、菖蒲という女はそういう奴だった。


男の手を煩わせることなく、消えて行く。


それよりも意気消沈を通り越して、今にも死にそうな勢いの天花に颯太は本を棚に戻すとしゃがんで天花を抱き上げると、無言で首に腕を絡ませてくる。


「いつでも会いに行ける。あれにも仕事があるんだ、しばらくしたら屋敷へ招待してもらおう」


頬に口づけると、突然天花の身体が熱くなった。


「…?!」


「天花?頬が熱いな、熱でも…」


瞳もやや虚ろ――というよりもみるみる潤んでくる。


「わ、わたしはどうしたんだ…!?」


とにかく目の前の颯太に触れたくて触れたくて、顔を近付けてその唇を奪った。


「…天花?」


ただ事ではない。

まさに、急に求めてきだした。


天花の誘惑に颯太が抗えるわけもなく…


「天花…まだ昼だぞ」


天花を抱きしめて首筋に唇を軽く這わせると、わなないた。


「わたし…わたしは…


息が荒く、やはりおかしい。

本人もそれに気付いていながら抵抗することができないでいる。


――颯太は天花を抱き上げた。


「何かおかしい、んだ…お前に触りたい…」



抱かれたい。


――だができるわけがない。


色違いなのだから。


とにかくこのままではまずいので、颯太は天花の部屋に連れて行き、寝かしつけた。


「少しそこで寝ていろ。いいな?」


上気した顔でわずかに頷いた。

颯太が部屋から出ると、いつの間に来ていたのか凪がにやにやして立っていた。


「颯太、あれが何だかわかるか?」


「さあ、何かの病気だろうか?」


ちげーよ、と言い、凪は颯太に耳打ちした。


「発情が来たんだ」
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