アカイトリ
…奇妙な光景が広がっていた。


先程まで颯太の命を狙って剣を振り上げていたのに、伊織は今は誰よりも堂々と部屋で茶をすすっている。


しかも何故わたしの方ばかりちらちら見るんだ?

普通は、今わたしの横にいる颯太と話すべきだろう!?


――天花の苛立ちが伝わったのか、やや視線を伏せながら颯太が囁く。


「天花、苛立つ気持ちもわかるが、ここは俺の顔を立ててくれないか?」


至近距離で目が合うと、人前ではどうしても恥ずかしくて、天花は赤くなる顔を隠すように頷いた。


だが全く納得がいっていない者が約二名。


「颯太様、この者の話を聞くおつもりですか?失礼ながら私はとても会得がいきません!」


「そうだぞ颯太。こいつをとっちめればあいつ…神は現れるんだ。やっちまえよ!」


血気盛んな楓と凪の発言にも伊織は反論することなく深く何度も賛同するように頷く。


「そうそう。僕みたいのを野放しにしてると、いずれまた命を脅かすこともあるかもですよー」


その場にそぐわないのんびりとした伊織の口調に、堪忍袋の緒が切れた楓は畳の上に置いた剣を掴んで立ち上がろうとした。


「まあ楓、少し外の空気を吸ってこい。凪も行ってくるか?」


やんわりと退席を促されたことに気付き、楓は頭を下げて出て行く。


凪は座椅子に踏ん反り返ったまま伊織をただ睨みつけている。


「…で。先程の続きだが…神は目覚めたと言ったな?」


「はい。でもこの世界…天球は見てないはずなんです。だから今ここで僕がお茶をすすってるのも見られてないはずですよ」


そしてまたちらりと天花を盗み見る。

さすがに苛立ちが頂点に達したのか、天花が机をばんと叩いた。


「わたしを見るな!」


「え、あー…すみませんね、こんなに綺麗な女の人を見たことがないもんで」


心からの賛辞だが話もしたくないという様子で天花が顔を背ける。


「失礼した。で、知っていることを教えてはもらえないだろうか?」


伊織はしばし黙り込む。


「あなたが何故金の髪に生まれたのか、教えましょう」
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