アカイトリ
「親父殿、収穫はあったのか?」


馬で十分程駆けた地に本邸がある。

颯太が住んでいる屋敷よりさらに広く、この街で1番大きい。


三ヶ月程ぶりに会った父…隼人(ハヤト)と大広間で対面する。


まだ四十の男盛りな父は、子を成すために十六で妻を娶った。


総じて一族は子が出来にくい。


碧い鳥の血が混じったことによる弊害だったが、誰もそれに不平を唱えたことはない。


神の鳥の一族――


そう崇められ、敬われる一族には、たいてい一子しか子が出来ない。


婚姻して間もなく幸運にも颯太は生まれたが、母は早くに亡くした。


これも、碧の血故の弊害だが、母は決意を胸に嫁いだという。


…自分から見ても、父は未だに魅力的だ。


藍色の瞳に、藍色の髪。

壮年に入った今、なお男としてさらに魅力的になってきている。


そんな父の前で颯太はずりずりと座りながら父に近づいた。


「北の方に行っていた。銀の鳥が現れたと言われていたが、気配もなかったよ」


「銀か。何種類居るんだろうか?」


「わからんな。確認できているのは碧、黒、白、黄…それに」


「朱…か?」


言葉を引き継いだ颯太を、隼人が手をぽんと打った。



「そうか…これは、朱の香りなんだな?」



気付いて、いた…。

さらにずりずりと近づき、とうとう隼人の隣までたどり着く。


「賊に襲われ、逃げまどっていた所を捕らえたんだ。雌だよ、親父殿」


「雌、か…。今はどうしている?」


「鎖で能力のほぼ全てを封じて屋敷に閉じ込めてある。親父殿、これで俺たちの役目も…無事に、終えることができる」


――隼人は息子の肩を感慨深く掴んだ。


「そうか…そうか。さぞ暴れたことだろうな」


「ああ。それにたいそう美しい」


めちゃくちゃにしたいほどに。


…隼人はしばらく黙った後、小さな机の引き出しから一冊の書物を颯太に渡した。


「持って行きなさい。朱に、聞かせてやるのだ」


碧の思いを――


颯太は、深く頷いた。
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