アカイトリ
父としばらく情報を交わし合い、颯太は本邸を後にした。


陽が暮れようとしている。


とりあえず、渡した書物と、碧の意思を天花に伝えろと言う。

自分はその後で会いに行くといった父。

馬を駆けて屋敷へ戻る間半歩後ろで付いて来ていた楓が馬を寄せて話しかけた。


「颯太様、隼人様は何と?」


「ん?旅の間に神の鳥には巡り会えなかったそうだが天花が居るのには気付いていた。香るからな、かなり」



楓は微かに鼻を鳴らしてみるが…匂わない。

やはり同じ同朋にしか分かり合えない何かがあるのだろうか。

…少しだけ、悲しくなる。


――屋敷に着いて楓が馬を引いて離れて行くと、颯太は真っ先に天花に宛てがった部屋へ向かった。


陽が完全に落ちると、天花は人間へと変化する。


もうそろそろだろう。


屋根を見上げると…居ない。


部屋へ入ると、片隅でうずくまっていた。

淡く発光し始めた天花を前に、颯太は柱に寄り掛かり、腕を組んでそれを見守る。


腕が伸び、

白い脚が伸び、

長く美しい朱い髪が伸び、人になった。


「これを着ろ」


蘭が事前に用意していた藍色の浴衣をばさりと投げた。

しばらく放心していた風なのは、鳥から人に変わる時にいつもそうなる。

我に返った天花が、じっと颯太を見つめた。


「…良い香りがする」


「ああ、親父殿が帰ってきたからな」


隼人は最も色濃く力を受け継いだらしく、香りもかなり強烈だ。

天花が浴衣も着ずにまだ見つめている。


「お前も良い香りがする。お前の方が好きだ」


何の気無しに言ったのだろうが、颯太は頬が赤くなるのを抑えられず、髪をかきあげると部屋を後にした。


「着替えてくる。話は後でな。お前も早く着ろ」


すたこらと退散し、いかに天花に調子を狂わされているか自認した。


「…この俺としたことが…」


呟いた時、庭の池の辺りでばしゃ、と大きな水音がしたので颯太は外に出る。



天花が美しく白い裸体で池に入り、水浴びをしている。


颯太は目を離せずにただ見取れていた。
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