アカイトリ
陽が昇り、本来の朱い鳥へと戻る。
天花は眠れないまま朝を迎えた。
『俺が死ぬまで傍にいてほしい』
人間の寿命は、たかだか数十年。
そんな中でも、颯太は特に短い。
神に創造された鳥たちに寿命はない。
碧は、神と共にさらに自分より長い時を生きている。
その間に、碧は颯太の始祖に出会ったことで、長い時の中でも、その天命に終止符を打つ覚悟を決めた。
颯太は、自分にも生きているからには何かしなければならないことがあるのだと言った。
それは、何なのだろう?
――天花は庭園の池に入り、長く細い脚で水を掻いた。
わたしの数千年よりは、毎日が喜びに溢れた数十年の方が幸せかもしれない…。
そう思い始めている。
颯太はそんな十数年を、わたしに与えてくれるかもしれない…
わたしの存在意義は、神に喜びをもたらし、喜ばれること。
だが神は我々を見限った。
人間も我々、鳥の一族もあなたから生まれたというのに――
――ぐるぐると考えていても、答えが出ない。
それは碧が遺したもうひとつの書物と、始祖が遺した書物に記されているだろう。
「早いな、天花」
振り返るとぼさぼさの金の前髪をかきあげながら颯太が部屋から出てきた。
陽光にきらめく朱の身体と、金の髪。
「昨夜は逃げ出しやがって。そんなにすごいことをした覚えはないぞ」
…馬鹿か?
わたしはそんなことをされたこともなかったのに。
…そんなにすごいことをした覚えはない…?
あれ以上にすごいことがあるのか…?
じっと動かない天花に颯太が太陽を見上げながら近づく。
「いい朝だ。お前がいると、平坦だった毎日も楽しく迎えることができる」
明るくだらしないこの男から何気なく出た一言に、天花は激しく共感した。
色違いの鳥の末裔よ。
子を成すことができなくともお前の十数年位は、傍に居てやっても、いいぞ。
――天花は颯太に歩み寄った。
天花は眠れないまま朝を迎えた。
『俺が死ぬまで傍にいてほしい』
人間の寿命は、たかだか数十年。
そんな中でも、颯太は特に短い。
神に創造された鳥たちに寿命はない。
碧は、神と共にさらに自分より長い時を生きている。
その間に、碧は颯太の始祖に出会ったことで、長い時の中でも、その天命に終止符を打つ覚悟を決めた。
颯太は、自分にも生きているからには何かしなければならないことがあるのだと言った。
それは、何なのだろう?
――天花は庭園の池に入り、長く細い脚で水を掻いた。
わたしの数千年よりは、毎日が喜びに溢れた数十年の方が幸せかもしれない…。
そう思い始めている。
颯太はそんな十数年を、わたしに与えてくれるかもしれない…
わたしの存在意義は、神に喜びをもたらし、喜ばれること。
だが神は我々を見限った。
人間も我々、鳥の一族もあなたから生まれたというのに――
――ぐるぐると考えていても、答えが出ない。
それは碧が遺したもうひとつの書物と、始祖が遺した書物に記されているだろう。
「早いな、天花」
振り返るとぼさぼさの金の前髪をかきあげながら颯太が部屋から出てきた。
陽光にきらめく朱の身体と、金の髪。
「昨夜は逃げ出しやがって。そんなにすごいことをした覚えはないぞ」
…馬鹿か?
わたしはそんなことをされたこともなかったのに。
…そんなにすごいことをした覚えはない…?
あれ以上にすごいことがあるのか…?
じっと動かない天花に颯太が太陽を見上げながら近づく。
「いい朝だ。お前がいると、平坦だった毎日も楽しく迎えることができる」
明るくだらしないこの男から何気なく出た一言に、天花は激しく共感した。
色違いの鳥の末裔よ。
子を成すことができなくともお前の十数年位は、傍に居てやっても、いいぞ。
――天花は颯太に歩み寄った。