アカイトリ
天花と名付けられた女は、ただただ目の前の男を注視している。



あれが…


碧い鳥と人間との間に生まれた、禁忌の存在…?


我々は神に創造され、神に愛されて共に楽園を生きてきた。



しばらくして神が人間を創造し、神の戯れで人の姿へと変えられ、人の世界へ降り立った碧い鳥…


そして人に捕らえられ、人との間に子を成した。



だから我々は神の怒りに触れて、神は人間を見放し、我々を楽園から追放し、夜は全ての力を奪われて、人の姿へと変えられた。


…瞬く間に同朋の数は減り、華美な姿であるが故に、全ての色の鳥は絶滅寸前に追いやられていた。


元凶の碧い鳥も。


朱い鳥も。


他の色の鳥も。


…お前が…その末裔だと?



だからわたしは、懐かしく感じてしまったのか――?



――他の色との間に子はできない。



だが人との間に子ができる事実――


「おい、抱くぞ」


颯太に呆れながらのしかかられ、天花は訳も分からず近づいてくる颯太の顔を凝視した。



「何をする」


「何って…見てわからないか?」


首筋を唇でなぞると、どんと颯太の胸を押した。



「だから、何をする!」



はあ?と素っ頓狂な声を颯太は上げてしまうと、今度は颯太がまじまじと天花を見つめた。



「お前…まさか、まだか」


「…?」


そうか…と何かを納得した風情で颯太は天花から身体を離すと、楓が用意していた布と包帯を傷口にあてた。


「まあいい。天花、色は違うが、同じ鳥の一族として聞きたい話も沢山ある。色々教えてくれ」


部屋を出て行った颯太を見送ると、天花はゆっくりと布団にくるまった。



碧い鳥。


あなたは何故、捕まったんだろう?



あの男は、それを知っているだろうか?
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