アカイトリ
「それは確かか?確かに花の香りがするな…」


颯太は用心深く辺りを見回す。


本当に神の鳥が現れたのならば、これ以上に幸運なことはない。



神の鳥たちに、碧が遺した遺言を伝えることこそが、自分の使命なのだから。



――確かか、と聞かれると、はっきりと返事はできない。

何かしら違う匂いが混じっているが、同朋に間違いないだろう。

天花は頷いた。

それを見届けて、楓が動く。


「辺りを探ってみます」


大型の猫科のような動作で楓が颯太から離れた。


天花は天花で、香りを手繰りながらふらふらと歩き出す。


「あっ天花様、待ってくださいっ」


展開についていけない芹生が後を追いかけ、颯太はがしがしと金の髪をかくと、天花の足が止まった。


「香りが…」


気配が消えた。


やっと…

やっと出会えると思ったのに――


――落胆の色を隠せない天花の肩を抱こうとして、颯太はわざと茶化した口調で天花の耳元で囁いた。


「お前に触れるには許可がいるんだったかな?」


ふわりと颯太の甘く、爽やかな香りが鼻孔をくすぐり、天花は顔を上げる。


「…居なく、なった…」


「いや、お前の存在を確かめに来たのだろう。近くには居るはずだ。そう落胆することはない」


その言葉にいくばかか気持ちを立て直し、深く頷いて颯太の服の袖を引っ張った。


「天花、お前から触れる分には許可は要らんわけか?」


「要るのなら二度と触ったりしない」


ぷいっと顔を逸らした天花に、芹生は二人のやりとりが楽しくて仕方なくて笑い声を上げた。


「可愛いなあ、お二人とも」


「芹生、滅多な口を聞くなよ、天花はお前よりもずっとずっと、年上だからな」


え…5つか6つ位しか変わんないだろ?


――怪訝な面持ちの芹生を見て、颯太が腹を抱えて笑い、天花は仏頂面になる。


「ただいま戻りました」


楓が小走りに戻ってくる。


「気配が完全に消えました。…が、油断なきよう」


「ああ、わかっている。さあ、気を取り直していこう」


楓は不安を拭うことができずに固い表情のままだった。
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