アカイトリ
街を行く全ての人々の視線が突き刺さる。


もの珍しいものを見ているような目で見ては、すれ違った後もなお振り返っては眺められる様子に、天花は颯太の袖を引っ張った。


「わたしは…うまく化けれてないのか?」


「いや?完全に人間の女だが。天花、皆がお前を見るのはな、お前が誰よりも美しいからだ」


――耳元で官能的な声で囁かれ、天花はぶるりと背筋を震わせた。


血が薄れてもなお、この男は魅了の声と美貌を持っている…


辺りを見回せば、自分だけではなく、颯太や楓にも熱視線があちこちから向けられていた。

彼らもまた人間として、魅惑的な存在なのだろう。

それに…街を行く人々は皆ばらばらの恰好をしている。

自分は屋敷に閉じ込められている間、浴衣や着物だったのに。


今日の颯太と楓もいつもとは違う恰好だ。


細い脚がくっきりわかる下の黒い服に、くるぶしあたりまである靴、『しゃつ』と呼ばれる身体の線がはっきりとわかる白い服…

人里に降りたことのない天花はうまい表現方法が見つからずに、いつもとは違う服装の颯太を呼び止めて尋ねた。


「何故いつもと違う恰好なんだ?」


「ああ、これか?これは異国から渡ってきた服でな、動きやすいんだ。いつもは屋敷にいる時の恰好でいいんだが確か、『しゃつ』と『じーんず』と呼ばれるものだ」


途中立ち寄った出店で、颯太は蘭に贈る髪飾りを見分しつつ、天花を見ずに問い掛けた。


「こういうのが着たいのか?」


「いや、そういうわけでは…」


「着たいのならば買ってやるぞ。脱がしやすいやつをな」


――それを聞いて天花は訳もなく赤くなり、乱暴にその場から離れる。それを芹生が慌てて追った。


店の店主が、この街の領主の息子でもあり、遊び人だった颯太に笑いながら言った。


「颯太様、次はあの方を囲ってらっしゃるんで?絶世の美女ですな、夢に出てきそうですよ」


ずんずんと遠ざかってゆく天花に苦笑いしつつ金を払い、軽く手を挙げた。


「最高に手強くてな。苦労してるんだ」

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