アカイトリ
暫く行くと、何やら人だかりができて、喧騒が飛び交っている。


楓は人一倍背が高いため、その様子を見てとれたので、隣にいる颯太に忠実に伝えた。


「乱闘です。六人程が殴り合いをしています」


「そうか。楓、行け」


はい、と返事をし、乱闘を収める為に人込みを半ば泳ぎながら楓が向かった。


きょろ、と天花を捜すと、女性の小道具などを取り扱っている店に足を止めて芹生と話している。

…まあ、心配ないだろう。


屋敷の使用人の雇用条件は、何かしらの体術や剣術が使えることだ。


そういう意味で芹生は楓の試験を合格しているため、用心棒にもなる。


颯太は、楓の後を追って人込みをかき分けて騒ぎの中心へと向かった。


――時を同じくして、かわいらしい髪飾りや小道具が売られている店に居た天花が、騒ぎの方へと視線を向ける。


「何か起きてるのか?」


「ただの町人らの喧嘩ですよ。ほらっ天花様、何か欲しいものはないんですか?ご主人様から言付かっているのでなんでも言ってくださいよ」


鼻息も荒く、天花のおねだりを待つ芹生は喜びに溢れていた。


皆が天花を見る。

颯太を見る。

楓も、なかなかの美貌だ。


「では…これを」


決意も新たに息巻いていた芹生の眼前に、ちりんとかわいらしい音を立てて鈴がぶら下がる。


「えっ。こんなものでいいんですか?」


「ああ。これがいい」


いたく気に入ったらしく、何度も鈴を揺らして音を楽しむ天花に、心底から感銘を受けた。


颯太は領主の息子だ。

この街でやれないことなど何もない。


女だって、あの美貌に、領主の息子という肩書だけで一発で落ちるのに――


天花は媚びない。


何よりこの美貌。この気高さ。

似合いの夫婦になるに違いない。


――芹生が思いに耽っている間、天花は再びあの香りを嗅ぎ取り、路地裏の方へとふらりと歩いた。


どこなんだ…?


どこにいる?


数千年、さ迷い続けてきたのだぞ。


会いたい。


会いたい。


――路地裏の陰から、すうっと何者かが現れた。


天花は、じっと目をこらした。
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