アカイトリ
「誰なんだ・・・?」


目をこらす。

路地裏の闇の中から男が二人現れた。

不精髭を生やした、見たこともない男たちだ。


こいつらではない。


さらに気配を手繰る。

男たちが卑下た笑いを浮かべながら天花を取り囲んだ。


「こりゃ最上級の美女だ、頭に似合いの女だぜ」


…頭?


一人の、髭を生やしていない方の男の顔をちらっと見て天花は絶句した。



「お、前は…」


「おう、あの暗闇で俺の顔が見えたのか?そうさ、俺が…朱い鳥、お前を矢で射ったのさ」



――あの時の賊だ…

人里近くの山中で、わたしを射った男…


後ずさりをする。

さらに路地裏の深くへ追い詰められ、天花ははっと背後を振り返った。


気絶しそうなほどの香り…


居るのか?

そこに、居るのか……?


「すまねえな」


矢を射った男から首に手刀を叩き込まれ、意識を失って前へ倒れた天花の体を支えた者があった。



「頭、とうとう手に入れましたね」


「ああ、お前たちよくやったな」


少しかすれた低い声…


人が持ち合わせるわけがない、魅了の声…


意識が急速に薄れてゆく中、手から鈴が音を立てて落ちた――


――芹生は鈴のかすかな音が聞こえ、天花が居ないことに気付くと、走って路地裏へ向かった。


「やべえ!天花様どこだっ!?」


馬の蹄の音がして駆け込むと…


ぐったりした天花が知らぬ男に背中から抱え込まれ、今にも走り出そうとしている。


男の顔はわからない。


だが、残った二人の男には見覚えがあった。



「あっ?!お前たちは昨夜俺に酒をくれた…」


「ちっ、面倒なのが来たな…頭、どうしやすか?」


「…ここで殺すと面倒だ。ひとまず連れて行け」



なんだこの声!

ご主人様と同じか…

それ以上の艶やかさ?



完全に挙をつかれた芹生は、腹に強烈な一撃をくらい、もんどりうった。


「天花、様…」


男たちに抱えられ、荷物のように馬に乗せられ、男たちは街を走り去った。


――乱闘を鎮めていた颯太が、急速に離れてゆく天花の香りに気付き、顔を上げた。



「…天花…?」

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