アカイトリ
しかし、最初に感じた違和感は今も拭えていない。


黒い鳥…


記憶に、ない。


いや…何色が存在するのかもよくわからない。


だが、今目の前にいるのは、間違いなく…



「はじめまして、朱い鳥」



喋った。


よくよく黒い鳥の顔を見ると…片目が潰れている。


隻眼の鳥――


黒はひたひたと近づいてきた。



「よくも俺の手から逃げてくれたもんだな」


「…黒?何を言って……わたしたちは、ようやく同朋に出会えたというのに…」


牢屋の柵ごしで立ち止まると、何故か黒い鳥は爆笑した。

歌うように。


「同朋だと?違うな、まだ気付かねえのか?」


頭が混乱してうまく話せない天花の前で、黒い鳥は漆黒の大きな翼を広げた。


「見せてやる」


瞬きも、呼吸することすら忘れて見入る。


すると淡い発光に包まれてみるみる漆黒の身体が縦に伸び、手足が伸び、人の姿を取った。


――日中、人に変わるには今日のわたしのように大きな代償を払わなければならないのに…


完全に人に変わったその男は…浅黒い肌に漆黒の隻眼、短い漆黒の髪に、精悍な顔立ちをしていた。


魔性の生き物、それは間違いない。


声もなくただ呆然とする天花を見て、男はくつくつと喉で笑い、岩にかけてあった颯太が着ていたような服を着た。


「まじまじと見んな。恥ずかしいだろ」


「く、黒…ではないのか?」


服を着替え終わると、牢屋の鍵を外してずかずかと入って来ると、天花の顎をとらえ、鍵を覗き込んだ。


「これはこれは、大変な美貌だな。これからたっぷり可愛がってやるからな」


「何を言う。我々は色違い。そんなことが許されると思って…」


「誰に許しを請うんだ?」


そう返されて言葉に詰まる。



「神など俺は恐れねえぞ。それに俺は神の鳥なんかじゃねえよ」



そう言うと、乱暴に唇を重ねられた。
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