アカイトリ
「ちっ、来たか。思ったより早かったな」


洞窟の入口には配下たちが警備している。

そうすぐにはたどり着かないだろう。


「天花に危害を加えるつもりはない。お前はちょっと黙ってろ」


――鈍い音と共に再び腹を殴られ、芹生はうめき声を上げて倒れた。

子供のように怯える天花の瞳を見て、黒い男はぽりぽりと頬をかく。



「まあ、なんだ。名を教えてなかったな。俺の名は凪(ナギ)だ」


「な、ぎ…」


おうむ返しに呟いた天花はようようと凪の顔を見つめる。


「二世代目とは、どういう意味だ…?」


「そのままだろ。黒い鳥と人間との間に生まれた、俺は二世代目だ」



凪は心臓の部分にある鈎爪の痣を天花に見えるように見せた。



――黒い鳥と、人間との間に生まれたのがこの男だと…?



凪は天花の前に胡座をかいて座り込む。


「俺の親父はどうしようもない悪でな。ある街を荒らし回っていた。そこを結託した街の者と領主に捕らえられたわけさ」


淡々と語る、神自らが造りあげた数羽のうちの一羽の子…


所詮天花は、世代を重ねた朱い鳥の雌と、朱い鳥の雄の間から生まれたにすぎず、実質的には神自らから造り出されたわけではない。


その数羽のうちの一羽。

今までつがいにならず、さ迷った揚句に、人間と結ばれた黒い鳥…



「母親は、生きて…?」


「生きてるもんかよ。俺が生まれて数年は生きていたが、死んだよ。俺の母はな、俺の親父から両親を殺され、そして無理矢理に抱かれて俺が生まれたのさ」



あまりにも理解できない凪の言葉の数々に口元を押さえた。



「神の鳥が、人間を殺したのか…?」


「ああ。街の領主であり、母の両親でもあった人間をな」



――同じく神から造られたというのに…

憎しみが勝り、人を襲った黒い鳥。


「特殊な牢屋に捕らえられていた親父を不憫に思い、母が牢から出してやった結果だ。自業自得だろ?」


だが、つがいの証が胸にある――


天花は願った。


早く早くわたしの元に来てくれ、と――
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