アカイトリ
「だがそれは…つがいの証だ…」


それに白い指先で触れてきた天花の手首を、凪は掴んだ。


「親父なりの愛し方だったんだろうよ。母も最初は拒絶していたが、親父の美貌と、香りには逆らえなかったのさ」


――神に与えられし、楽園に咲いた花からつけられた色。


黒い花など、存在したのだろうか?


その疑問が顔に浮かんだ天花を面白そうに凪が覗きこんでは頬に触れる。



「黒い花など楽園には咲いていない。親父はな…神の、不浄で黒々とした、負の精神を形にした姿なんだ」


「神が…不浄…?」



肩、首、胸へとあちこちに唇で痣をつけながら、凪は天花の手首を強く引っ張って抱きしめる。



「碧、朱、白、黄…とにかく造られた順番が存在し、それは神の心情を色に例えたものが、鳥なんだ」



碧が裏切るまでは、神も心穏やかだった。


だが裏切られた後、最後に造られた色は、黒だった。

自らの心の色を指先で練り上げた、漆黒の色。


「神の嫉妬や憎しみでまみれた手で造られた親父が、楽園に居られるわけもねえだろ?」


もちろんその後にすぐ、神の鳥たちは楽園を追われた。


黒い鳥は、心も邪悪なままに神のどす黒い心を宿し、世界を憎んで飛び続けたのだ。


「碧が裏切りさえしなかったのならば、親父は鮮やかで美しい色の鳥に造られたかもしれん」


それを最期まで悔いていた。


「天花、俺と共に来い。俺が、共に生きてやる。長い時を」


…違う。


お前とでは、ない――


「いや、だ…」


「は?何だって?」


「お前と共には、行かない!」


叫び、離れようとしたが、凪は柔らかな天花の身体を離さない。



「俺は碧を殺すぞ」



その一言で、天花の朱い瞳がさらに燃えるように鮮やかになる。


「殺させは、しない…」


爪が伸び、凪の背中を思い切り引っかいた。


「いてっ」


だが、なおも離そうとしない。


その時――



「何をしている・・・」



入口で、声がした。

天花はそちらを見て、その姿を確認するとふわっと微笑んだ。
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