アカイトリ
来た…

来てくれた…!


独りの孤独から救ってくれた人間…


わたしの闇を、取り払ってくれた人間…


目が合った。

遠くからなのに、それがわかった。



「何故泣いている?」



静かな問い掛けの中にも、怒りを抑えきれない激情が声に乗って洞窟に響いた。


嬉しい。

わたしのために、怒ってくれている。


――天花は、息を切らして探してくれた颯太に、感激していた。


そして注がれる視線に、はじめて裸であることを恥ずかしく思い、着物をかき抱いた。


「抱いてもねえのに随分な慣れようじゃねえか。え?碧い鳥の末裔さんよ」


颯太は息を整え、眼前の正体不明の男を睨みつける。


「…何故それを知っている?」


「そりゃお前、一目瞭然だろ。その香りとその風貌。金の髪、ね。親父が言ってた通りだ 」


「何を言っているんだ。お前は何者だ」


駆け付けた楓が、洞窟にみるみる満ちる殺気に反応して剣を抜いたところを颯太に手で止められた。



「説明するのも面倒だしな、碧い鳥の末裔よ、ここで死んでくれ」



言葉と共に、斬激が襲い掛かってきた。

それをかろうじて避けると、前髪を一房持っていかれる。


後退しつつ、楓から剣を奪うと、颯太は前進しつつ、重たい斬激を繰り出す。


「ほう、できるなお前。俺はお前を殺して天花を奪ってゆく」


「そうは、させん!」


剣と剣が噛み合い、颯太は謎の男と至近距離で睨み合った。


左目のない、漆黒の瞳と、甘美な香り…


「黒い鳥…なんだな?」


「ああ。二世代目だがな。母は人間だ」


衝撃で力が緩んだところを押し返され、ごつごつとした岩壁に押さえ付けられた。


「颯太様!!」


楓が叫び、天花が悲鳴を上げた。


その悲痛な叫び――


凪は、颯太を押さえ付けたままに牢屋の中の天花を振り返る。


目一杯開いた朱い瞳が、語った。



“わたしも、死ぬ”



――恋い焦がれ死に。

神の鳥の、至上の死に方…


凪は小さくため息をつくと、力を緩めた。

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