アカイトリ
傷などすぐに治ってしまう。
わたしは死ねないのだ。
だから、どこかにいるかもしれない仲間に会うために、旅立たねばならないのだ。
そして、それが雄であるならば、子孫を残したい。
――天花は目を覚ました。
朝だ。
人から元の朱い鳥の姿へと戻っていた。
碧い鳥と人との間に生まれた禁忌の子よ。
願わくば、お前の代で滅びるのだ。
でなければ…
――天花は部屋の中でゆっくりと翼を羽ばたかせる。
よし、問題なく動く。
そして少し開いた障子に首を捩込ませ、外に出ると、大空に向かって大きく羽ばたいた。
…はずだった。
飛べない…
何故だ?
焦りと共に、天花は自分の首に巻き付けられた鎖に気付いた。
細かな文字が、びっしりと編み込まれている。
なんだこれは……?
苛立ちも露わにもう一度羽ばたこうとするが、翼に力が入らない。
「無駄だぞ、天花。この屋敷からは出られはしない」
何が面白いのか、颯太は笑うと池を隔てた向かいの建物の一室から声をかけてきた。
「その鎖は俺の始祖が碧い鳥を捕らえた時のやつだ。蔵に眠っていたのを引っ張り出してきた」
…孔雀程の大きさの天花は、怒りを露わにして威嚇するかのような大きく翼を広げる。
「優美だな。鳥のままでも十分美しい。…楽しみだ」
何かを含んだ言いように、天花は広い庭園に飛び出した。
かすかではあるが、飛べる。
だがこの屋敷に張り巡らされた結界と、首の鎖に阻まれて逃げ出すことは敵わない。
時を待て…
油断した時に、どうにかして逃げ出すのだ。
天花は庭の隅で丸くなり、瞳を閉じた。
わたしは死ねないのだ。
だから、どこかにいるかもしれない仲間に会うために、旅立たねばならないのだ。
そして、それが雄であるならば、子孫を残したい。
――天花は目を覚ました。
朝だ。
人から元の朱い鳥の姿へと戻っていた。
碧い鳥と人との間に生まれた禁忌の子よ。
願わくば、お前の代で滅びるのだ。
でなければ…
――天花は部屋の中でゆっくりと翼を羽ばたかせる。
よし、問題なく動く。
そして少し開いた障子に首を捩込ませ、外に出ると、大空に向かって大きく羽ばたいた。
…はずだった。
飛べない…
何故だ?
焦りと共に、天花は自分の首に巻き付けられた鎖に気付いた。
細かな文字が、びっしりと編み込まれている。
なんだこれは……?
苛立ちも露わにもう一度羽ばたこうとするが、翼に力が入らない。
「無駄だぞ、天花。この屋敷からは出られはしない」
何が面白いのか、颯太は笑うと池を隔てた向かいの建物の一室から声をかけてきた。
「その鎖は俺の始祖が碧い鳥を捕らえた時のやつだ。蔵に眠っていたのを引っ張り出してきた」
…孔雀程の大きさの天花は、怒りを露わにして威嚇するかのような大きく翼を広げる。
「優美だな。鳥のままでも十分美しい。…楽しみだ」
何かを含んだ言いように、天花は広い庭園に飛び出した。
かすかではあるが、飛べる。
だがこの屋敷に張り巡らされた結界と、首の鎖に阻まれて逃げ出すことは敵わない。
時を待て…
油断した時に、どうにかして逃げ出すのだ。
天花は庭の隅で丸くなり、瞳を閉じた。