アカイトリ
客間に隼人が入ってきた。


蘭は真っ赤に泣き腫らした目を上げ、久々の当主の到来に平伏する。


「皆、久々だな。元気にしていたか?」


その場の空気にそぐわず、和やかに話しかけてきた隼人は、相変わらずに若く、美しい。


…颯太には敵わないけれど。


「蘭、しょげるな。あれは助かったぞ」


「!ほ、本当でございますか!?」


壁際に座していた疾風が咳ばらいをしてその無礼をたしなめると、蘭は両手で顔を覆って颯太の無事を喜んだ。


「ああっ、本当に良かった!颯太様…颯太様…」


想いがほとばしり、それは隼人へと届いたが…

この娘の想いを颯太が受け入れることはないだろう…


「天花が、あれの魂を引き止めた。時間はかかるが、完治するだろう」


天花の名が出た瞬間。


蘭の顔が、嫉妬と憎しみに歪んだ。


…仕方ない。

このようなことになってしまった元凶であり、また、命を救ったのだから。


「あまり天花を責めるのではないぞ。あれは神の鳥。しかも純血種だ。我々が、ずっと待ち望んできた鳥なのだ」


「…はい…承知しております…」


――渋々という程で隼人に返事をしたところで、楓が部屋に入ってきた。


完全に憔悴しきっている。


誰とも目を合わすことなく、疾風の隣に座した。


ここは語らねばならんだろう…。

隼人は口を開いた。



「颯太はな、生きる意味を探していた。使命はあれど、現れぬ神の鳥。存在すら疑い、これ以上の重荷を次世代に背負わせぬために、家を断絶させるつもりだったのだよ」



楓はそのことを颯太から聞いてはいたが、蘭ははじめて聞く話に瞳を大きく開く。


「私も、もうそれでいいと思った。我々は…疲れきっていたんだ。待つことに…」


――静まり返る部屋。



「そんな中、あの朱い鳥が現れた。金の髪を持って生まれたあの子の代に。私は、あの子が生まれた時に思ったんだ。きっと…これで全てが終わる、と」

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