アカイトリ
そんな中、楓は隼人の元を訪れる。
命は助かったといえど、颯太の命を危ぶめたことには変わりない。
慚愧の思いが身を蝕み、いかに「大丈夫だ」と言われようともその言葉を鵜呑みにするわけにはいかなかった。
「…隼人様」
障子の外から話しかけると、小さく返事が返り、楓は入室した。
「どうした。…ひどい顔だな」
苦笑まじりに言われ、いかにひどい顔色をしているかを悟る。
「…私は…何もできませんでした」
父・疾風から最強の剣豪の名を受け継ぐべき傑出した才能の持ち主と言えど、齢数百年を生きる神の鳥の前では赤子のようなものだった。
何より、颯太から制されて手出しをしなかったことが徒になった。
「…お前は、お前の家系は、古くから我が家系の者を守る役割を担っていたのだ。だから、逆らえないのは仕方のないことなのだよ」
――現当主の慰めも、楓の心には微々たる癒しにもならない。
ただ、頭を下げ続ける。
「何を迷う?何を悔いているのだ?あの子は結果的には生きている。お前が駆けなければ、むしろ死んでいた」
筆を置き、大柄な身体を縮こめる楓の肩を、労りを持って隼人が叩いた。
「神の鳥は、我らの宿願。何色であったとしてもそれを受け入れ、伝えねばならなったのだ。それも数千年かかってようやく叶う」
――ろうそくの炎が吐息で揺れる。
「お前の使命とは何だ?」
問われ、ようようと顔を上げて、これだけは真っすぐに答えた。
「颯太様をお守りすることです」
今まで、颯太の笑顔に優しさに、癒されてきた。
あの方を、守りたい――
「それがわかっているならば迷う必要はない。これからあの子には困難ばかりが降り懸かるだろう。お前が少しでもその憂いを晴らすのだ」
「はい。私の命を賭けて」
颯太によく似た笑顔で笑いかけると、再び隼人は筆を手に取った。
「行きなさい。先程から違う鳥の香りがする」
――許さん。
颯太様を傷つける奴は、この手で…
転生できぬほどにめった斬りにしてやる――
命は助かったといえど、颯太の命を危ぶめたことには変わりない。
慚愧の思いが身を蝕み、いかに「大丈夫だ」と言われようともその言葉を鵜呑みにするわけにはいかなかった。
「…隼人様」
障子の外から話しかけると、小さく返事が返り、楓は入室した。
「どうした。…ひどい顔だな」
苦笑まじりに言われ、いかにひどい顔色をしているかを悟る。
「…私は…何もできませんでした」
父・疾風から最強の剣豪の名を受け継ぐべき傑出した才能の持ち主と言えど、齢数百年を生きる神の鳥の前では赤子のようなものだった。
何より、颯太から制されて手出しをしなかったことが徒になった。
「…お前は、お前の家系は、古くから我が家系の者を守る役割を担っていたのだ。だから、逆らえないのは仕方のないことなのだよ」
――現当主の慰めも、楓の心には微々たる癒しにもならない。
ただ、頭を下げ続ける。
「何を迷う?何を悔いているのだ?あの子は結果的には生きている。お前が駆けなければ、むしろ死んでいた」
筆を置き、大柄な身体を縮こめる楓の肩を、労りを持って隼人が叩いた。
「神の鳥は、我らの宿願。何色であったとしてもそれを受け入れ、伝えねばならなったのだ。それも数千年かかってようやく叶う」
――ろうそくの炎が吐息で揺れる。
「お前の使命とは何だ?」
問われ、ようようと顔を上げて、これだけは真っすぐに答えた。
「颯太様をお守りすることです」
今まで、颯太の笑顔に優しさに、癒されてきた。
あの方を、守りたい――
「それがわかっているならば迷う必要はない。これからあの子には困難ばかりが降り懸かるだろう。お前が少しでもその憂いを晴らすのだ」
「はい。私の命を賭けて」
颯太によく似た笑顔で笑いかけると、再び隼人は筆を手に取った。
「行きなさい。先程から違う鳥の香りがする」
――許さん。
颯太様を傷つける奴は、この手で…
転生できぬほどにめった斬りにしてやる――