アカイトリ
「わ、わたしに触れる時は…」


「ああ、事後承諾ですまないな。触れていいか?」



否定しようにも激しい動悸と苦痛で二の次が告げられない。


「…寝ていないと、傷口が開くぞ」


「その時は、お前がまた治してくれればいい」


覆いかぶさる颯太の優しい微笑がろうそくの炎に照らしだされる。


「…痛むか?一日だけ人になった代償にしては大きすぎるんじゃないか?」


「…いや、後悔はない。わたしはまた、人に変わる日を持つかもしれない。人になり、人のことを知りたい。人として、生きてみたい…」


――静寂の部屋に二人。


颯太は天花の浴衣に手をかけた。


真っ白な、出るべき部分は大きく盛り上がり、くびれるべき部分は、ひどくくびれている。


「天花、俺がお前を治療してやる」


唇が重なり、首筋を吸われたところで颯太が顔を上げた。


はじめて胸や首につけられた痣を見た。


「…黒からつけられたのか」


天花ははっとなり、浴衣をかき抱こうとしたが、両腕を押さえられ、身動きができない。


「全部、俺が消してやる」


凪につけられた全ての部分に唇を這わせてその痕を消していく。


「…っ、いや、だ…っ」


「拒絶には聞こえないぞ。本当に嫌ならもっと強く拒絶してみろ」


自身もまた傷まみれ。

それでも重ねずにはいられないその身体。


――天花は凪と颯太のあまりの違いに驚愕した。


凪には、触られるのも嫌だった…


――部屋に、天花が甘く泣く声が満ちる。

もしかしたら、外にも聞こえているのではないかという大きさで。


「…感じて、いるな」


「言葉で…わたしを高ぶらせるのはやめろ…っ」


何故だろう?

先程まで全身を走っていた激痛が消えている…


天花は震える指を伸ばして颯太の顔を包み込む。


「わたしを、離さないでくれ…っ」


このまま、ずっと――…

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