もしも君が助けてくれたら
「病んでるとか、そういうんじゃない。ただ、周りに迷惑かけてる俺が大嫌いで、だからといって何もできない自分に苛ついてる。学校でも、親戚でも狩谷に似てるからって騒がれて、それで、俺が満足すると思ってる。今日初めて会ったあんたに言うのもあれだけど、姉ちゃんが親戚に預けられないのって、病気に弱いからなんだよな。姉ちゃんさ、すぐに病気に犯されやすくて、だけど俺は毎日健康健康。だから莫大な治療費いらないんだよ。まぁ、なんつーかあれだよな。まさか中学でこんなにも経済とかに頭を悩ませるとは思わなかったな。これでもさ、前まではすっげぇ幸せだったんだぜ?周りの奴らよりも、幸せだと思ってた」

その続きを聞こうとしたとき、声がした。

「夏ー」

のんびりとした聞いていたら眠くなるような、そんな声。

振り返ってみると、こちらをまん丸の目でみている顔があった。

「姉ちゃん」

夏が携帯をパチンッと閉じてポケットに入れて立ち上がった。

その時、俺の携帯が鳴った。

携帯を開いてみると、夏からメールが着ていた。

コイツ、さっきまで俺にメールしてたのか・・・。

夏を見上げると、夏がニヤリと笑った。

性悪だな・・・。

柊を振り返ってみると、柊は眉をひそめて俺をみていた。

まるで「何で曉が夏と話してるの?」って言いたそうな目だった。

俺は立ち上がって俺よりも小さい夏を見下げて肩を叩いた。

「じゃぁな。次からは車に気をつけろよ」

すると、夏もうなずいてあぁ、と言った。

柊の横を通る時、柊が首を傾げた。

「アイツ、おまえの弟?」

俺が聞くと、柊が軽くうなずく。

「アイツ、車に跳ねられそうだった。気をつけろって言っておいたけど・・・」

すると、柊が苦笑いを浮かべた。

「いっつもボケーとしてるからね。とりあえず、ありがとう」

俺は肩を竦めて柊の横を通り過ぎた。
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