もしも君が助けてくれたら
部屋で夕飯も食べずただじっとしていると、携帯電話がなった。

正直、出たくなかったが、ディスプレイに映った名前をみて思わず通話ボタンを押していた。

「もしもし」

荒い息づかいが向こうから聞こえた。

そして・・・。

「・・・曉、助けてくれ・・・」

夏の声が聞こえた。

苦しそうな、それこそ、死にそうな声だった。

そして、ガッという激しい音と、携帯電話が落ちる音がした。

「余計なことするな」

今日聞いた、あの憎たらしい声が聞こえた。

俺は部屋から飛び出し、無造作に靴をはき、乱暴に家を出た。

何事かと母さんがみていた気がしたけど、それどころではない。

それでも今の状況を知るために携帯電話に耳をあてていた。

「・・・いっつ!!」

狩谷が顔をしかめたような光景が頭に浮かんだ。

が、次の音に耳を疑った。

ドサッという何かが放り出された音がし、次にゴンッという何かがぶつかった音がし、せき込んだ声がした。

・・・柊の声だ。

俺は嫌な想像をしてしまい、足を早めた。

携帯電話が邪魔になり、耳からはずし、ポケットにつっこんだ。

全力で走る。

柊の家は知っていた。

住所を夏に教えてもらい、調べてみたところ、案外俺の家からも近かった。

「いい加減にしろよてめぇらぁ!!!」

そんな声が大きな白い家の扉の向こうから聞こえた。

ヤバイ。

俺は乱暴に玄関を開け、ドカドカと入り込み、有り得ない光景に目を疑いつつも狩谷を殴った。

狩谷は尻餅をつき、俺を冷たい目で見上げた。

が、俺も冷たい目で見下げる。

「はは・・、何で曉が来てんの」

突然微苦笑を浮かべた柊が床を見つめたままそう呟いた。

柊は、俺が来ることを分かってたんだな・・・。

「夏が来いっつったから。ただ事じゃないと思ってたけどまさか、だな・・・」

「ほんと、馬鹿みたい・・・」

柊の目が白濁したように見えて、俺は座り込み、柊の赤く腫れ上がった頬を撫でた。

目も頬も唇も腫れ上がり、腕には火傷の後もあって、ところどころ血がにじみ出ていた。

もっと早くにきていればよかった。

そう、後悔した。

「俺は馬鹿だからな」

そう言うと、柊は、はは、と力なく笑い、苦笑を浮かべて床をぼんやりと眺めた。
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