シスター
新居


ここは小さな田舎町。
あると言えば畑と田んぼ。

生えっぱなしになった雑草、草っぱら。


そこを抜ければ、まるで底がないような池がある。


「ねぇ、あなた。本当にこんな場所に住むの?」
「あぁ、心配しなくても自然が多くていい場所じゃないか。煩わしいご近所付き合いもなさそうだしな」


そんな草っぱらを一台の車が走り抜けてく。
運転をしてる父親はのんびり自然を感じているが、助手席に座ってる母親は窓の外の風景を見ながら些か不満を漏らしてる。

「これじゃ買い物が不便ね」 

確かに、見渡す限り草っぱらしかないのだから。

「お父さんってば…何でこんな場所の家なんか買ったのかな?」
「お父さん、昔から物好きだもんね」


2人の言い争いを聞きながら後部席でくすくすと笑う恭子と美佳子。

「ねぇねぇお姉ちゃん、着いたらまず探検しようよ」
「いいわよ。美佳子は1人にしたら危なっかしいもの」

この4人、鈴村家族は東京の都心住まいだった。

しかし、都会という場所の特徴なのか
近所付き合いや人間関係が煩わしくなる時がある。

まるで早送りでもされてるような…何かに追われてるような毎日。

そんな毎日から逃走するように父親は会社を辞めこの町に引っ越して来た。


都心から車を飛ばし何時間経ったのだろう。


キキーィッ!


「着いたぞーっ!おい、母さん、起きなさい!」


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