週末の薬指

冷蔵庫に入っていたオムライスを温め直して食べながら、後片付けをしているおばあちゃんの背中に向かって

「婚姻届、記入したよ。まだ提出してないけど」

おばあちゃんに負けないほどあっさりと告げた。

一瞬洗い物をする手が止まったような気がしたけれど、おばあちゃんは振り向きもせず

「そう。披露宴するなら日程は早めに教えてよ。おばあちゃんも色々忙しいからね」

「うん、わかった」

予想通り、特に何も抑揚のないおばあちゃんの反応だけど、それでも。

「今まで、ありがとね」

私の言葉を聞いた時、洗い物のリズムが少し変わったような気がした。


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