週末の薬指
「で、地盤を継ぐ後継者を選定中らしいです。……今俺と結婚すると、可能性が低いながらも俺にも後継者候補の可能性はあるらしくて。……本当、寝耳に水ってこういう事ですよね」

眉を寄せて、顔をしかめるシュンペーはそれ以上何も言えないまま背を向けた。

私と弥生ちゃんも後を追いながら、突然聞かされた話を理解しようと必死。

「で、結局シュンペーは彼女と結婚するのか?」

ぶつぶつ言う弥生ちゃんと同じ気持ちの私だけど、私と違って両親に何も問題がない弥生ちゃんよりもシュンペーの彼女の葛藤がわかるような気がする。

親がいなくて右往左往し、悲しい思いと背負いたくもない苦労をしている私。

親がいるけれど、その親のせいで大きな悩みを抱えてるシュンペーの彼女。

真逆の状況なのに、悩みの根本は同じような気がして複雑な気持ちになる。

どこまで生きても、結局『親』というものには振り回されて、影響を受けるものなのかな。

どう答えを出していいのかわからない気持ちで唇をかみしめながら、ふと思うのは。

夏弥のご両親は、私の出生の事を知ったらどんな反応をするんだろうって事。

きっと、夏弥はその事をご両親に伝えてないはずだから。

私と会う時に、言わなければいけないのかな……。

『父親が誰だかわからない人を我が家に迎える事はできない』

悠介の両親から、そんな事をはっきりと言われた過去が私の中に蘇って気持ちが苦しくなる。

また、あの悲しみをあじあわなければいけないのかと、逃げ出したくなる。
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