週末の薬指
「大臣って……そんなすごい人なの?」

相変わらずのんきな口調の弥生ちゃんの言葉に、シュンペーは一瞬悩んだ後、その大臣の名前を口にした。

「うわっ大物っ。昨日もテレビで見たよ。見た目も評判もいいし、しばらくは安泰じゃないの?」

からかうような弥生ちゃんに、シュンペーは肩をすくめて見せた。

「そうなんです。俺も、結構高感度高い政治家なんで、本当に驚いてて。あいつ……今まで何も言わなかったから」

「で、彼女はやっぱり結婚しないって言ってるの?」

苦しげなシュンペーに聞いた。父親の事があるにしても、シュンペーとの結婚は別の次元の話のように思えるけど。当人同士にしてみれば、そんなに大きな事なのかな」

「あいつは、とにかく俺とお腹の子が父親に巻き込まれる事を恐れてるんです。政治家の地盤を継ぐなんて簡単な事じゃないし、両親の離婚の原因には父親が政治家だって事もあるようで」

「ねえ、地盤を継ぐ人って他にいないの?あの大臣には息子いなかったっけ?」

弥生ちゃんが首を傾げる。

「一人います。あいつのお兄さんになるらしいんですけど、両親が離婚する時に後継者としてお父さんに引き取られて帝王学じゃないですけど、将来への道筋をつけられながら育ってきたお兄さんが、いたんですけど」

そこで、シュンペーは小さく息を吐いて苦笑した。

「お兄さんは、政治家になる事を拒否して、アメリカに渡ったんです。もともと頭のいい人で、今は医学を学ぶために有名な教授のもとで勉強しているらしいです。
政治家への道を拒んだのと同時に、恋人と結婚して養子に入ったのもあって、あいつのお父さんはもう諦めてるらしいんですよね」
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