週末の薬指
私をかばうように近い距離に立つおばあちゃんの後ろで、疑問はどんどん大きくなっていく。

そんな戸惑う気持ちを抱えながら立っていると、

「木内さん」

「あ、シュンペー」

「こんばんは。僕も来ちゃいました」

振り返ると、大きな笑顔のシュンペーが立っていた。

今日会社で着ていたスーツではなくスリムなグレーのスーツとレモンイエローのネクタイ。

どこか華やかに見えるシュンペーの笑顔にしっくりときている。

彼女の趣味かな。

「え、どうしてシュンペーがここにいるの?」

今日社長賞を貰うメンバーの中にシュンペーは入っていないはずだから、今ここにいる理由がわからない。

いくら社員とは言えど、関係のない社員がここに呼ばれるとは思えないんだけど。

確かに私の直属の後輩だけど、それだけの理由でここに呼ばれたんだろうか。

まさか、それはありえない。

そんな疑問が私の顔に出たのか、シュンペーはくすっと笑って。

「生まれて初めて、父親の立場を利用しちゃいました」

照れ臭そうに呟いた。

「父親?」

頭をかきながら恥ずかしそうにしているシュンペーは、周囲を気にしながら私の耳元に小さな声で囁いた。

「このホテルの社長の春山平緒は、僕の父親なんですよ」
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