週末の薬指
きらびやかな照明に照らされて、私の視界はどんどん滲んでいく。

と思っていたら、頬を温かいものがつっと流れている。

溢れる涙は止めようがなくて、既にお開きとなった会場の片隅でハンカチを瞳にあてていた。

気持ちが落ち着くまでもうしばらく、夏弥が抱きしめてくれるこの時間を過ごして何もかもを整理したい。

ここに来た時には予想もしなかった現実が私の感情すべてを硬直させて、思考回路を破壊した。

思えば、この紅色のワンピースをおばあちゃんに見せられた時から動き出していた真実への道のり。

私の出生に関する正確な情報を誰かが知っているとは思わなかったのと、すぐそばにあった同じ血が流れる人。

それがシュンペーでありシュンペーの父親だなんて、だれが想像しただろう。

『隼平の大切な先輩としてでいいから、これからも花緒さんの人生に参加させてもらえないだろうか』

シュンペーのお父さんからの真摯な言葉が、私の涙腺を一気に壊して、もとに戻せなくなった。

これまで、どんな悲しいことも、切なく身を切られるような苦しいことも、泣かないように、笑ってやり過ごしてきたけれど。

人は温かい言葉をかけられたり、抱えている重いものをおろせる時には泣いてしまうのだと気づいた。

そう、私は一人ぼっちではない。おばあちゃんしか身内がいないわけじゃない。

自分と血の繋がりがある人がこの世にいて、近くで呼吸ができる幸せが寂しさを失くしていく。

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