週末の薬指
他人からあからさまに嫌われる事もないけれど、かといって、抜きん出て好かれる事もない。
特に害のない普通の女として、これまで生きてきて、きっとこれからだってそうだと思う。
毎日仕事を一生懸命頑張って、そしておばあちゃんとおいしいごはんを食べながら笑い合って。

胸を焦がすくらいに好きな人ができるかもしれないけれど。

きっと一生このまま。私は大きな変化もなく、生きていくんだと思う。
これまでずっと、何の違和感も感じないまま、そう思って生きてきたのに、今更瀬尾さんに心を揺らされたくらいで感情を右往左往させるなんて。

だめだ。やっぱり私に瀬尾さんは荷が重すぎる。

「で、どこで知り合ったんですか?」

相変わらず押しの強い声で問いかけられた。
一番若そうな元気な男性。
その目には、瀬尾さんの事を知りたいって気持ちがありありと浮かんでいる。
決して悪気のない好奇心、きっと、瀬尾さんに憧れてるんだろうな。

その瞳に押されるように、考えてみるけれど。

知り合ったきっかけは、おばあちゃんに呼ばれて瀬尾さんが家に来た事。
大して派手な出会いじゃないんだけど、がっかりしないかな。
華やかに過ごしてそうな瀬尾さんとの出会いが、地味なものだと教えていいのだろうかと、悩んでしまう。
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