週末の薬指
そんなおばあちゃんに後押しされて入院していたあの頃、きっと私の様子は不安定で、ふらふらとしていたと思う。
悠介との別れの原因が、戸籍にもいない、この世にもいない私の父親のせいだと、そのことばかりが私の体を包み込んでいた。
けれど、悩んでも悩んでもどうしようもないってわかっていたから、どうにかして心を回復させたくて必死だったあの頃。
「やだな……私、変だったでしょ。突然笑ったり泣いたり、ご飯も食べられないときもあったし一日中中庭でぼんやりしてる時もあったし」
「そうだな。思わず抱きしめたくなるくらいに俺の心をぐっと掴んでどうしようもない女だった」
「……抱きしめたくなるって……」
「一目ぼれって初めてだったけど、まるで高校生のガキのように必死で病院に通ってた。
お客さんの家に仕事で行った帰りとか、展示場に寄るって言っては会社から出て、時間が許す限り花緒の顔を見に寄ってた。……早く自分のものにしたいって、それだけで」
「そんな、そんなこと……嘘だ」
「嘘じゃない」
信じられない私の気持ちを遮って、大きな声で言い聞かせるように。
夏弥は真剣な顔で私に思いをぶつける。
そして、軽く私にキスを落とすと額と額を合わせた。
悠介との別れの原因が、戸籍にもいない、この世にもいない私の父親のせいだと、そのことばかりが私の体を包み込んでいた。
けれど、悩んでも悩んでもどうしようもないってわかっていたから、どうにかして心を回復させたくて必死だったあの頃。
「やだな……私、変だったでしょ。突然笑ったり泣いたり、ご飯も食べられないときもあったし一日中中庭でぼんやりしてる時もあったし」
「そうだな。思わず抱きしめたくなるくらいに俺の心をぐっと掴んでどうしようもない女だった」
「……抱きしめたくなるって……」
「一目ぼれって初めてだったけど、まるで高校生のガキのように必死で病院に通ってた。
お客さんの家に仕事で行った帰りとか、展示場に寄るって言っては会社から出て、時間が許す限り花緒の顔を見に寄ってた。……早く自分のものにしたいって、それだけで」
「そんな、そんなこと……嘘だ」
「嘘じゃない」
信じられない私の気持ちを遮って、大きな声で言い聞かせるように。
夏弥は真剣な顔で私に思いをぶつける。
そして、軽く私にキスを落とすと額と額を合わせた。