ゼロの行方
 彼等の陰謀が細菌兵器の開発、若しくはその威力の確認ならば、『レアⅡ』の壊滅的被害で目的は達成している。そのうちの生存者を『タイタン』が地球などに運んだとしても、隔離状態を維持していれば感染の拡大はない。これ以上、事態が動くことはない。だが、事態は動こうとしている。
 恐らく第一段階とは感染症による『レアⅡ』の壊滅なのだろう。そして生存者がいるということも、『タイタン』が、いや、『タイタン』でなくとも、近くにいた艦船がその生存者を救出することも織り込み済みのことなのだろう。ならば第二段階とは?
 窓の外に拡がる星の海を眺めながらレナードは考え込んでいた。
 やがて意を決した様に彼は口を開いた。
「リサ、連邦本部に通信。内容は『感染症の患者を収容、救援を斯う』。ミサキ、地球に向けて出力五十パーセントで前進」
 第二段階、それは『タイタン』が地球に向かう航路を取ることなのだろう。それは解っていた。だが、相手の思惑から外れてしまった場合、陰謀を張った者はきっと妨害をしてくるのだろう。ならば、ここは相手の思惑通りの行動をするしかない、レナードはそう決断したのだった。 
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