一生忘れられない恋…

初めての人

「こんばんわー!」

エレベーターの扉が開くとそこが、クラブの入り口だった。
入り口に立っているお兄さんにお金を払い、挨拶しながら入っていく。
まるで暗幕をかけたような、わざとらしい暗さの通路を進んでいく。
入っていくとすぐそこにロッカーがあり、アタシ達は2人で1つのロッカーに荷物をしまう。

フロアーにはまだ人が少なく、一心不乱に1人で踊り狂っているB系の男の子がやたらと目立っていた。
まずは、テンションを上げる為に一杯カウンターで飲む事にした。
カウンター内に居たスタッフの黒人のお兄さんと雑談して時間を過ごした。
その黒人さんが私達がついこの間まで居た田舎に住んでいたと知って、話が異常に盛り上がってしまった。

そうこうしているうちに、気付いたらフロアーが満員に近くなっていた。
この盛り上がりに遅れてはならん!と私達もフロアに飛び出していく。

その晩はHIP HOP系のイベントだった。
近くに居た、知らないお姉さん達と一緒にはっちゃけて、踊りまくった。
音楽に身をゆだねていると、心身ともに解放されてゆく。
心がフリーな感じになってゆくのが、とにかく気持ちよかった。

その後、ちょっとだけ疲れたアタシはユリコやお姉さん達から少し離れて一人で隅っこの方の壁にもたれていた。

ボーっとしながら、フロアーを眺めていると、隣で同じように休んでいた男が声をかけてきた。

その人は、ナンパ男のようにがっついている感じもなく、知り合いのように自然に話し掛けられちゃったので私も警戒するヒマが無かった。

そして、何故か一緒にドリンクを飲みながら休む事になった。

彼が、両手にドリンクを持って、テーブルに運んできてくれた。
その時、初めてちゃんと明るい所で顔を眺めた。

『あれ?なんかめっちゃ普通じゃん?この人。』
それが、彼に対する第一印象だった。
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