一生忘れられない恋…

そして始まった。

リリリリーン♪

壁に掛けてある電話が不意に鳴った。
ちょっとビクッとしながら、あたしは受話器を取った。

「もしもし…?」
「あ、もしもし、俺だけど。覚えてる?」

心の中では『どこの俺だよ!?』と突っ込みながらも、一応答える。

「あー、昨日の…?」
「そうそう。昨日はどうもね。」
「今日は家に居たの?」
「いや、昨日の友達の所に泊まってさっき帰ってきた所」
「そっちは?」
「俺も今帰ってきた所。」

聞けば、彼は大学院生なので、大抵は一日中夜まで研究室に居る事が多いらしい。
深夜まで篭る事もあるとかで、今日はこの電話の為に早く帰ってきたらしい。

その後彼は色々と自分の事を話してくれた。

北陸地方で高校までを過ごして、去年までは、
今行っている大学院の学部に通っていた事。
大学時代はヨット部に入っていて、ずっと海にいた。
今は、サーフィンにハマっている事。

親に無理を行って院に入ったから、ポスティングのバイトで稼いでいる事。
卒業旅行で行った、バリ島の事。

けしてノリがよい訳でもなく、おもしろい訳でもなかったけど、
色々な事を一生懸命に話してくれた。

なんか、頑張っちゃってるなーと思いながらも、何故か相手にしてしまった。

女子大だし、コンパもろくにないし、思ったのとは違う学生生活を送っていた
あたしには、何か新鮮だったのだ。

東京の大学院生という、未知のジャンルの男が。

「あのさ、今度2人で会えない?」とイイヤマが言った。
「あー、うん。いいよ。」放課後に何も浮いた用事がないあたしは、断る理由もなかった。

「じゃあさ、今度の金曜とかどう!?」
「いいよ。どこにする?」
「じゃあ、新宿にする?何線だっけ?」

そうこうして、今度の金曜日、新宿の西口で待ち合わせる事になった。
「じゃあ、また、電話していい?」
「あんま夜遅くなかったらOKだよ。」

この日はそこで電話を終わりにした。
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