【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐


「先輩との電話は、龍輝のことがほとんどだった。
だけどいつの間にか“年下の女の子”の話がメインになってて、“12歳下の子と結婚する”って聞いた時は椅子から転げ落ちたよ」

「あ、私の登場?」


「うん。式とかそういうのはやらないって言ってたから、俺と美奈が実際に会ったのは先輩の葬儀の日」


…そっか。
直人さんと美奈はあの日に会ったんだ。

変な言い方かもしれないけれど、あの日が「二人の運命の日」だったってことかな。




「…龍輝のことで揉めてた人たちを見て、“コイツら馬鹿じゃねーの”って思った。
先輩が亡くなって一番辛いのは龍輝なのにさ、その龍輝を見ながら暴言吐くとかあり得ない。
……美奈のご両親のこと、正直今でも好きになれないよ」


直人さんの真っ直ぐな言葉に、美奈は小さく笑うだけだった。


…美奈の親の気持ちは、わからなくはない。

でもあの場所では言われたくなかった。というか、故人を前にして言うものじゃない。


…今の俺のまま当時にタイムスリップ出来るなら、俺はきっとあの人たちを殴り飛ばしてる。

でも…、


「…でもあの人たちの言葉のおかげで、今の俺があるんだと思う。
美奈が俺のそばに居て、いつの間にか直人さんも居て、二人が結婚して哲が生まれて、俺は一人で住むようになった。

“きっかけ”があったから、俺は俺で居られるんだと思う」


色んなものが積み重なって「人生」になる。

俺の人生は、俺の周りの人が居なきゃ出来なかったんだ。




「美奈の親や、お袋のこと…あの時のことは一生忘れないし、嫌な思い出には変わりないけれど。
でも今こうやって直人さんたちと酒を飲んでる。それってすげー幸せなことだよ。

だから恨んだりとかはしてない。 俺、今の生活楽しいもん」




……そうだよな。
俺、今の生活が好きなんだ。

直人さんや美奈と酒を飲んで、こうやって話してるのはすげー楽しいけど。
でも俺はやっぱり、俺らしく生きていきたい。

そう思うんだ。




「…参ったなぁ。
そんなに清々しい笑顔見せられたら、“一緒に住もう”って言えないじゃん」


美奈が、苦笑しながら俺を見た。

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