海宝堂〜海の皇女〜
白い兵士達は長い槍を構えて、取り囲んでいた者達を牽制しながらバルームを護衛する形に並んだ。

「親衛隊がわざわざ守りにくるか…間違いなさそうだな…
よし!引き上げだ。」

その言葉を合図に、睨みをきかせていた男達は背中を向け、目の前から姿を消した。

バルームの中で背中を合わせていた3人は、ふぅ〜…と崩れた。

「危ない所でしたね。
さあ!村に戻りましょう。僕、大丈夫か?」

「は、はいっ!」

兵士の優しい笑顔にリルトは元気よく返事をした。どうやら、憧れているようだ。

前を泳ぐ親衛隊について、バルームは無事、村に戻ることが出来た。


「みんな、無事か!?」

バルーム着き場ではガルが心配そうな顔で待っていた。

「うん、この人達が来てくれたから…それまではちょっと危なかったけど…」

シーファがそう言うと、ガルは肩を大きく落としてため息を漏らした。

「ま、何事もなかったならいい…」

「お話し中失礼します。
あなた方が神殿から来られた人間の方達ですね?」

親衛隊の1人がやって来てそう聞いた。
その言い方はとても丁寧で優しく、姿勢も正しかったので思わずシーファもガルも姿勢を正した。

「はい。そうですけど…」

「やはりそうでしたか!
では、城にお連れ致します。セイド王とアリア王妃がお待ちです。」

…どうして知っているんですか?
そう聞きたかったのだが、こちらへ、と急かす親衛隊にシーファは聞くのをあきらめた。

船着き場に来ていたリルタと寂しそうなリルトに手を振り、シーファ達はバルームに乗って城に向かうことになった。

クチミチスイ村からバルームで十数分、村よりも大きな泡に包まれた城が近づいてきた。
その姿は地上の城とどことなく似ているが、やはり見たこともない城だった。

シーファ達が城につくと、そこには2人の人物が待っていた。

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