海宝堂〜海の皇女〜
「その城下町ってどんなとこなんだ?あの島…」

「テラカイズ島。」

「そうそう、その島の露店みたいな感じか?」

島の名前ぐらい覚えてなさいとニーナに小突かれながらリュートが聞く、そうね…と、シーファが続ける。

「テラカイズ島は商業と流通の街だから通りが広いし、宿屋や酒場があって、夜も結構賑わってたでしょ?
トイスはどっちかって言うと人の住む街って感じかしら?城で働いてくれている人、執事さん達に、城を護ってくれている護衛兵達、コックさんに庭を綺麗にしてくれる庭師さん達、それから家具や食器、洋服にアクセサリーの職人さん達とその家族の家があるの。」

「ふえ〜そりゃまた沢山の人が働いてんだな〜」

「なるほど、それでテラカイズ島がその食生活を支えてるって訳ね。」

ニーナの言葉にうなずいて、

「そう。でも魚や果物、調味料はテラカイズ島からだけどトイスで作ってるものもあるの。農業をやってる人達も暮らしてるんだ。
だから、街は家族が暮らせるくらいの家が並んでいて道も狭いけどみんなが家族みたいであったかいの。」

「ふーん、そっか…いい国なんだな。」

リュートの言葉にシーファはうなずいた。

「さて、そろそろ日も沈んできたし、中に入るか?」

ガルに言われ、シーファとリュートはキッチンのある船室へと入っていった。
ガルがそんな背中を見つめていると、ニーナが言った。

「ちょっと、シーファは神殿に来てもらわないと困るんだからね。」

「ああ、わかってる。」

「……そう?国を継いだ方がいいって顔してる。
確かに彼女はいい王様になるでしょうね。国民からも慕われてるでしょうし、何より彼女自身が国民の事を慕ってるわ。」

疑わしい目で見上げられてガルは小さく言った。

「それはあいつ自身が望んでないだろ?」

そう言ってガルも船室に入っていった。
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