海宝堂〜海の皇女〜
日は真っ赤に染まってその姿を海に隠し、かわりに月が姿を現した。
あと少しで満月になる月が海面を照らし、キラキラと光った。

船室ではガルの夕食を食べながら楽しく過ごした。


「………っと!全く弱いくせに、いつもいつも…」

酔って寝てしまったニーナをガルがベッドまで運んだ。
キッチンのある船室の船尾側が女部屋、下が男部屋になっていた。
放り投げられても起きることなく、ニーナは寝息を立てている。

「じゃ次はあんたの寝床だな。」

ガルが振り向くとリュートがソファーに手を掛けて準備OKと笑った。

「いいの?ソファーもらっちゃって?部屋が狭くなるし、床で寝たって…」

「ダメダメ!俺ら最初の船で床で寝たんだけどこれが痛いのなんのって…
一段落したらベッド作ってやるからよ。」

リュートが大きく手を振りながら言った。

料理はガルの得意とするところだったが、大工仕事はリュートの方が得意らしい。
このマシューを作った万周さんに直接指導を受けたと自慢気に話すリュートは日曜大工程度だとガルに言われ、最高の物を作ってやると勝手にシーファに約束したのだった。

「じゃ、おやすみ〜」

2人を見送ってソファーに横になり、ブランケットをかぶった。
窓から波の音がして、ゆっくりと揺れる船体はゆりかごのように気持ち良かった。海の上で夜を明かすのは初めてではないけど、胸の鼓動が抑えられなくてなかなか寝付けなかった。

と、誰かに呼ばれたような気がして身を起こした。
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