海宝堂〜海の皇女〜
「それより、なんであんなとこで寝てた?」

「そうそう。って、ガル〜あんたも気付かなかったわけ?」

「見張り台に居たくせに、寝やがって〜…うぶっ!」

テーブルに押し付けていたガルの力が強くなる。

「まあ、疲れてたのもあるんだろうが…なんか、心地いい音が聞こえたような…」

「音ぉ〜?なんだよそれ、夢じゃねえの?」

「私も聞いた…」

2人は神妙な面持ちで見つめ合った。

「シーファも聞いたって…一緒にいたの?」

「違う!私は部屋で寝ようと思ったら聞こえてきて…音って言うよりは、話し声みたいで…
有り得ないし、夢だと思ってたら、ガルも聞こえたって…」

怪しげな視線に首を激しく振ってシーファは答えた。ニーナは、やだ怖いと言って腕を撫でた。
またガルに視線を戻すと、ガルは目を丸くしていた。

「…俺が聞いたのは声じゃなかったが…?」

「どんな音だったの?」

「そうだな…高い…笛の音みたいな音だな。」

「シーファのは?どんな声だったんだ?」

リュートがガルの手から逃れて興味津々で聞いた。

「怖くはなかったの…子供みたいな声で、満月がもうすぐだって…」

「満月?なんだそりゃ?」

「2人で似たような夢を見ただけよ!もうこの話しはおしまい!」


ニーナがしん…とした空気を断ち切るように言った。

「ニーナ…」

「なによ、終わりって言ったでしょ?」

シーファはニーナの顔を見てニヤリと笑った。

「もしかして、怖いの?こういう話。」

ニーナは赤くなってそっぽを向いた。
リュートも笑っている。

「海を旅して、伝説の武器を持ってたりするのに?」

「あのね!伝説や伝承はちゃんとした歴史の上に成り立ってるの!そういうなんの根拠もない話とはちがうの!
海の上で話し声が聞こえたなんて、気のせいか、波の音の聞き間違いよ!」

「…そうね。」

必死で言い訳をするニーナが可愛くてシーファは笑いを堪えながらうなずいた。

「全くニーナは…」

「あ、リュート…その顔…」

さっきまでテーブルに押し付けられていたリュートの顔にはくっきりと跡が付いていた。
シーファはさっきの仕返しと言わんばかりに2人を笑ってやった。
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