狼彼氏に甘いキスを
豊岡くんが言ってた。
『多分、あいつはそんなこと思ってない』と。
「……」
ただ、黙ることしかできないあたしに健斗は優しく笑いかけた。
「ごめんな。俺は夏織には豊岡がいるとわかって言ってるんだから。」
だけど、今だけ。
そう言って健斗はあたしを抱き締めた。
息が止まる。
豊岡くんとは違う。
だから、
「…いや」
たとえ、その相手が健斗でも、あたしを抱き締めるのは豊岡くんだけがいいの。
「健斗、離して。お願いっ」
離れようとするが、健斗は更に腕の力を強めた。
「…なんで、俺じゃないんだよ」
苦しい訴え。
だけど、健斗には応えることができないの。