狼彼氏に甘いキスを


豊岡くんが言ってた。


『多分、あいつはそんなこと思ってない』と。


「……」

ただ、黙ることしかできないあたしに健斗は優しく笑いかけた。


「ごめんな。俺は夏織には豊岡がいるとわかって言ってるんだから。」


だけど、今だけ。



そう言って健斗はあたしを抱き締めた。

息が止まる。


豊岡くんとは違う。


だから、



「…いや」



たとえ、その相手が健斗でも、あたしを抱き締めるのは豊岡くんだけがいいの。

「健斗、離して。お願いっ」

離れようとするが、健斗は更に腕の力を強めた。



「…なんで、俺じゃないんだよ」



苦しい訴え。

だけど、健斗には応えることができないの。



< 70 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop