エスメラルダ
暗転。
雪嵐。
出血。
暗転。
首をくくった男。
暗転。
美しい緋蝶城。
「覚えておきなさい。兄様がお前に飽きたらわたくしがお前を殺すわ」
レイリエの言葉。
絵の具の匂い。緑の匂い。土の匂い。水の匂い。
エリファスは美しい土地だった。
エスメラルダはカリナグレイでの生活よりもエリファスの生活の方が好きだった。
朝、絞りたてのミルク。
昼、寝かせてあったチーズ。
夜、子豚の丸焼き。
自然と一緒に時間が流れた。
優しい時間だった。
エスメラルダの心の傷を癒すのには最適の場所だった。
レイリエさえいなければ。
だけれども、レイリエ、あの子も可哀想な子。叶わないのに。それは罪なのに。
そういえばメルローア王家は狂っているとランカスターが言っていたのを思い出す。
近親相姦を罪だと思わぬ輩が増えたと。
恐ろしい事だとエスメラルダは思う。
それは自然に反している。
ランカスターが笑っている。
「此処にいて、お前の絵を描いて過ごす。それが私の楽しみだよ」
そして様々な事をエスメラルダに叩き込んだ。状況に応じて立ち位置から立ち姿、視線の方向まで。
だからエスメラルダは、指先までピンと神経を張り詰めた美しい立ち方が出来るようになった。
「私の未来の花嫁さん」
暗転。
雪嵐。
馬車の事故。
「いやぁぁあああああ!!」
エスメラルダは絶叫したつもりだった。
だけれども声は頭の中で反響するだけで、目も開かない。
エスメラルダは眠っていた。
その手をフランヴェルジュは握り締めていた。布で縛りさえして。決して離れぬように。
「死ぬな……頼む。エスメラルダ……」
ああ、レイリエに毒を盛られた後ね、と、エスメラルダは思い返す。
「死ぬな」
この声に引き戻されて、エスメラルダは戻ってきたのだ。戻ってこられたのだ。
そうでなければ。
死んでいた。
暗転。
エスメラルダは眠っている。
疲れたようにひたすら眠りを貪っている。
そこに、闖入者。
ブランシール様?
ブランシールが己に口づけるのを見てエスメラルダは混乱した。執拗なキス。憎んでいるようなキス。記憶にはないはずなのにそれが真実あった出来事である事をエスメラルダは疑わない。
何故……!?
パン、と、大司祭マーデュリシィは手を叩く。エスメラルダは強引に現に引き戻された。
「『審判』はこれにて終了せり。水晶は全き姿でここにあり。エスメラルダ。アイリーン・ローグの言葉に偽りなし!!」
雪嵐。
出血。
暗転。
首をくくった男。
暗転。
美しい緋蝶城。
「覚えておきなさい。兄様がお前に飽きたらわたくしがお前を殺すわ」
レイリエの言葉。
絵の具の匂い。緑の匂い。土の匂い。水の匂い。
エリファスは美しい土地だった。
エスメラルダはカリナグレイでの生活よりもエリファスの生活の方が好きだった。
朝、絞りたてのミルク。
昼、寝かせてあったチーズ。
夜、子豚の丸焼き。
自然と一緒に時間が流れた。
優しい時間だった。
エスメラルダの心の傷を癒すのには最適の場所だった。
レイリエさえいなければ。
だけれども、レイリエ、あの子も可哀想な子。叶わないのに。それは罪なのに。
そういえばメルローア王家は狂っているとランカスターが言っていたのを思い出す。
近親相姦を罪だと思わぬ輩が増えたと。
恐ろしい事だとエスメラルダは思う。
それは自然に反している。
ランカスターが笑っている。
「此処にいて、お前の絵を描いて過ごす。それが私の楽しみだよ」
そして様々な事をエスメラルダに叩き込んだ。状況に応じて立ち位置から立ち姿、視線の方向まで。
だからエスメラルダは、指先までピンと神経を張り詰めた美しい立ち方が出来るようになった。
「私の未来の花嫁さん」
暗転。
雪嵐。
馬車の事故。
「いやぁぁあああああ!!」
エスメラルダは絶叫したつもりだった。
だけれども声は頭の中で反響するだけで、目も開かない。
エスメラルダは眠っていた。
その手をフランヴェルジュは握り締めていた。布で縛りさえして。決して離れぬように。
「死ぬな……頼む。エスメラルダ……」
ああ、レイリエに毒を盛られた後ね、と、エスメラルダは思い返す。
「死ぬな」
この声に引き戻されて、エスメラルダは戻ってきたのだ。戻ってこられたのだ。
そうでなければ。
死んでいた。
暗転。
エスメラルダは眠っている。
疲れたようにひたすら眠りを貪っている。
そこに、闖入者。
ブランシール様?
ブランシールが己に口づけるのを見てエスメラルダは混乱した。執拗なキス。憎んでいるようなキス。記憶にはないはずなのにそれが真実あった出来事である事をエスメラルダは疑わない。
何故……!?
パン、と、大司祭マーデュリシィは手を叩く。エスメラルダは強引に現に引き戻された。
「『審判』はこれにて終了せり。水晶は全き姿でここにあり。エスメラルダ。アイリーン・ローグの言葉に偽りなし!!」