エスメラルダ
「余は、議会の決議でもなければ他国の風評でもなく、皆の意見を聞き、皆の思いに応え、これからの政を行っていきたいと思う。その第一番が我が妻の事だ」
 エスメラルダは瞠目した。こぼれ落ちそうなほどその大きな緑の瞳を見開いた。
「エスメラルダ・アイリーン・ローグとの婚姻を、他の誰でもない、この国の礎たる皆に願う。許して欲しい」
 一瞬の沈黙の後、人々は手を叩いた。喉よ裂けよとばかりに歓声を送った。
「お幸せに!! 国王様! 王妃様!!」
「エスメラルダ王妃に百年の幸あれ!!」
「万歳!!」
 兵士達が馬に積んであった荷の一つを大急ぎで解いた。その中から溢れてきたのは野の花だった。
 天に花が舞う。エスメラルダの目の前を花弁が踊る。
「わ、わたくし……」
 兵士の一人が恭しく花冠を差し出した。
 フランヴェルジュはそれを取り上げ、エスメラルダにかぶせる。
「否やはきかん。王の結婚として、民の前での誓い以上に重みのあるものがあろうか? ホトトルの水なんかくそくらえだ。さぁ、俺を一生愛すると誓え。俺も誓う」
 フランヴェルジュの真剣な眼差しがエスメラルダの胸を射抜く。
 エスメラルダの赤い唇が震えた。
「一生が終っても、来世でも、そのまた次の生でも……貴方だけを愛します、フランヴェルジュ・クウガ・メルローア」
「俺のエスメラルダ!! 時の果てまで俺にはお前だけだ!!」
 フランヴェルジュはエスメラルダを抱き寄せると口づけた。
 人々の声がこれ以上はないと言うほどまでに高まる。
 木々に止まっていた小鳥が、不意に歌いだした。それは全くの偶然でありながら賛歌のようでもあった。
 野の花舞い、小鳥の囀り響き、民人の歓声に包まれる、その中で、二人はいつまでも口づけを交わしていた。
 
 


 
 ───幸せになってね───
 遠く、懐かしい声が聞こえたような気が、エスメラルダには、した。
 大丈夫よ、レーシアーナ。
 エスメラルダは胸の中で囁く。幸せで早鐘打ち、破裂しそうな胸の中囁く。





 いつまでも、いつまでも、一緒。
< 185 / 185 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

みどり姫

総文字数/23,824

恋愛(純愛)18ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
遊詩人達が言葉を尽くして讃える姫がいる。 『みどり姫』。 女達が憧れやまぬ全き美貌。 男達が恋焦がれるそのしとやかさ優しさ。  この大陸、アザルディーンで最も古き血統の姫なれば、気高くあるのは当然やもしれぬ。 だけれども、気高さだけでは決してない彼女には、数え切れぬ程の歌と詩と情熱と接吻が捧げられた。 そうして、彼女はいつも笑っていた。 なのに彼女はいつからか、不幸だった。 現在サイトでのみ正説公開中
涙の跡を辿りて

総文字数/93,660

恋愛(純愛)55ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
男でもなく女でもない精霊は願う。 自分の胸に甘い疵をつけた者との永遠を。 青年は知る。 どれ程の愛を甘受していたかという事を。 きっと、風は吹き貴方達の頬に口づけを贈る事でしょう。 きっと、水は貴方達の喉を潤してくれる事でしょう。 きっと、大地は貴方達に豊かな恵みをもたらしてくれる事でしょう。 きっと、炎は貴方達の冷えた身体を温めてくれる事でしょう。 恐れずに、いきなさい。精一杯行きながら、生きなさい。
巡り巡る命

総文字数/4,253

恋愛(純愛)6ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
大体私は結婚する気などなかったのだ。 と、言うより出来ないものだと思っていた。 私の職業は娼婦だったから。 男達に人気はあった。 娼館の『お母さん』も私が一番客を取ると言って何度も何度も褒めてくれた。 実際休む間もないほど沢山の男達を受け入れていて、私は酷く疲れていた。 ──そんな時に出会ったのがシュンだった──

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop