デュッセルドルフの針金師たち後編
「ええやんか。つかまったらつかまった時のことや」

オオツキさんが何とかなごまそうとする。マメタンが、

「イミグレだけは行ったら駄目よ。とにかく謝って勘弁して
もらうことね。商品は自分の物だから必ず返してもらうこと」

経験者の言葉は重かった。外は真っ暗だ。緊張が高まってくる。

アルトのいつもの場所に昨晩同様ずらりと5人分のスペースが並ぶ。
いつものドイツ人に今日だけと耳打ちをして一番角をオサムが取った。
販売しながら常に十字路向かいの路地奥を見つめている。

各パートナー、始めは客の側に立っていた新人達ももう内側に入って
忙しく手伝っている。乱れ飛ぶお札とケッテとビニール袋。ならべる
暇もないほどの宴たけなわ、やはり来た。ブルーのライトがちらりと見えた。

「ポリツァイ!」

と叫んでオサムはベッチンをまたいで四隅を掴みすばやく持ち上げて
カバンにしまう。皆一斉にパタパタパタとしまっていく。実に鮮やかだ。
ワーゲンがのろのろと現れて去っていく。手ごたえは十分だ。

2時間ほどで各ペア5万円の売り上げだ。新人は皆興奮していたが、
面接で選りすぐり、今日の特訓のかいがあって大いにやる気満々。
どうだ!悪くても1ヶ月で1000ドルは稼げるってことだ!
< 44 / 61 >

この作品をシェア

pagetop